はじめに:まずは落ち着いて、状況を確認しましょう
ネット通販で楽しみにしていた商品が届かないと、「もしかして詐欺?」「お金だけ取られた?」と不安になりますよね。でも、焦る必要はありません。商品が届かないのには、単純な配送遅延から悪質な詐欺まで、さまざまな理由が考えられます。
この記事では、そんな時に「何を」「どの順番で」確認し、行動すればよいのかを、消費生活アドバイザーの視点から具体的なステップに沿ってやさしく解説します。一つひとつ冷静に対処していけば、きっと解決の糸口が見つかるはずです。
1. 最初のステップ:自分で配送状況を確認する
まず最初に、ショップに連絡する前に自分で確認できることがあります。多くの通販サイトでは、注文した商品の状況を簡単にチェックできます。
ステップ1: 購入履歴の確認
ほとんどの通販サイト(例:楽天市場など)には「購入履歴」や「注文履歴」といったページがあります。まずはそこを開いてみましょう。商品の配送状況が「ショップ」「出荷」「配達完了」などのステータスで表示されているはずです。
- もし楽天IDを使わずに注文した場合でも、注文時に送られてきたメールに記載の受注番号とメールアドレスを入力すれば、注文詳細を確認できます。

ステップ2: ステータスごとの意味を理解する
表示されるステータスが何を意味するのかを理解することが大切です。
| ステータス | 状況 | 次にすべきこと |
|---|---|---|
| ショップ | 商品がまだお店にあり、出荷されていない状態です。 | ショップに直接問い合わせて発送時期を確認しましょう。 |
| 出荷・配達店 | 商品がショップから発送され、配送会社によって運ばれている途中です。 | 配送会社の追跡ページで、お荷物追跡番号を使って詳細な場所を確認しましょう。 ※メール便など、追跡番号がない配送方法の場合は、出荷後の状況が更新されないこともあります。 |
| 配達完了 | 記録上は、配達が終わっていることになっている状態です。 | 次の「配達完了なのに届いていない場合」の項目をチェックしてください。 |
ステップ3: 「配達完了」なのに商品が見つからない場合
ステータスが「配達完了」になっているのに手元に商品がない場合、以下の3点を必ず確認してください。
- 置き配やポストの確認 玄関先や宅配ボックスなど、指定した「置き配」場所に商品がないか見てみましょう。また、郵便受けに不在票が入っていないかも忘れずにチェックしてください。
- 家族の確認 自分以外の同居している家族が、代わりに商品を受け取っていないか聞いてみましょう。
- 届け先住所の確認 注文時に登録した届け先の住所に、番地や部屋番号の間違いがないか、購入履歴から再確認してください。
自分で確認しても状況がわからない場合は、次にお店へ直接連絡してみましょう。
2. 次のステップ:販売業者(ショップ)に連絡する
自分で調べても解決しない場合は、商品を販売したショップへ直接問い合わせます。
法律的に、購入者が代金を支払ったのに販売業者が商品を発送しないことは「債務不履行」という契約違反にあたります。これは「約束を守っていない」状態であり、購入者には商品を発送するように要求する権利があります。
この要求をすることを「催告(さいこく)」と呼びます。連絡する際は、ただ「商品を送ってください」と伝えるだけでなく、「〇月〇日までに発送(またはご返信)をお願いします」のように回答期限を設けることが重要です。期限を設けることで、万が一返信がなかった場合に、次の「契約解除」などの手続きがスムーズに進められます。
問い合わせのメールやフォームには、以下の3つの情報を必ず含めましょう。
- 注文番号
- 購入した商品名
- 商品が届いていない具体的な状況(例:「購入履歴では配達完了となっていますが、商品が見当たりません」など)
もし販売業者から返信がなかったり、対応してもらえなかったりした場合は、詐欺の可能性も考えなければなりません。
3. もしや詐欺?怪しいサイトの見分け方
販売業者と全く連絡が取れない場合、残念ながら「なりすましECサイト」などの詐欺サイトを利用してしまった可能性があります。消費者庁も注意を呼びかけており、以下のような特徴を持つサイトには特に注意が必要です。
- 価格が極端に安い 一般的な市場価格と比べて、ありえないほど大幅に安く販売されている。
- 支払方法が限定的 クレジットカードが使えず、支払いが銀行振込のみに限定されている。さらに、その振込先口座が個人名義になっている。
- 日本語がおかしい サイト内の説明文や、注文後に送られてくるメールに、機械翻訳したような不自然な日本語表現が見られる。
- 運営者情報が不十分 法律で定められている「特定商取引法に基づく表記」に、事業者の所在地や電話番号の記載がない。または、記載されていても検索すると嘘の情報だとわかる。
⚠️ 警告:詐欺サイトのリスクは金銭被害だけではありません
詐欺サイトに登録してしまった場合、商品が届かないだけでなく、入力した氏名、住所、クレジットカード情報などの個人情報が流出し、別の犯罪に悪用される危険性もあります。
詐欺の疑いがある場合や、業者からの返金がない場合、次に取るべき行動は支払い方法によって異なります。
4. 具体的な返金手続き:支払い方法別の対処法
ここからは、支払ってしまったお金を取り戻すための具体的なアクションです。
クレジットカードで支払った場合
クレジットカードで支払った場合は、返金される可能性が比較的高いです。すぐにカード会社に連絡し、事情を説明して相談しましょう。
このとき利用できる可能性があるのが「支払い停止の抗弁権」という制度です。これは、簡単に言うと「販売業者に問題があるので、カード会社への支払いを一時的に停止します」と主張できる権利のことです。
ただし、この権利には利用できないケースもあるため、注意が必要です。
⚠️「支払い停止の抗弁権」が使えない主なケース
- 支払総額が4万円未満の場合(リボ払いの場合は3万8000円未満)
- 翌月一括払いの場合(多くの人が利用する方法ですが、分割払いを対象とした法律のため対象外となります)
銀行振込で支払ってしまった場合
銀行振込での支払いは、残念ながら返金が最も難しいケースです。詐欺の可能性を念頭に、迅速な行動が何よりも重要になります。
- 警察に相談する 最寄りの警察署や、都道府県警のサイバー犯罪相談窓口に連絡し、被害届の提出について相談します。
- 金融機関に連絡する お金を振り込んだ金融機関に連絡し、事情を説明して、振込先口座の凍結を依頼します。
スピードが重要なのは、販売業者の口座にお金が残っていなければ返金が受けられないためです。被害に気づいたら、すぐにこの2つのアクションを起こしましょう。
一人で解決するのが難しいと感じたら、専門の相談窓口を利用することが大切です。
5. 最終手段:専門機関に相談する
当事者間での解決が困難な場合、トラブル解決をサポートしてくれる公的な相談窓口があります。一人で悩まず、専門家の力を借りましょう。
| 相談窓口 | 相談できる内容 | こんな人におすすめ |
|---|---|---|
| 消費生活センター(消費者ホットライン「188」) | 消費トラブル全般。解決のためのアドバイスや、業者との間に入って交渉してくれる「あっせん」を行うこともある。 | まずどこに相談していいかわからない、トラブル全般についてアドバイスが欲しい人。 |
| 警察 | 詐欺が疑われる場合。被害届の提出など刑事事件としての対応を相談する。 | 販売業者と全く連絡が取れず、詐欺サイトの可能性が高いと感じる人。 |
| 通販110番(JADMA) | 通販トラブルに関する相談。専門の相談員がアドバイスをくれる。 | 日本通信販売協会(JADMA)の会員企業とのトラブルで困っている人。 |
| 弁護士・司法書士 | 法的な手続き(損害賠償請求など)。内容証明郵便の送付や、裁判での代理人を依頼できる。 | 被害額が大きく、法的な手段で解決したいと考えている人(ただし弁護士費用がかかる点に注意)。 |
これらの機関に相談する際には、「注文確認メール」「業者とのやり取りの記録(メールやスクリーンショット)」「振込明細」「クレジットカードの利用明細」など、証拠となるものを事前に準備しておくと、話がスムーズに進みます。
まとめ:諦めずに、冷静に行動しよう
ネット通販で商品が届かないと、とても不安で腹立たしい気持ちになるのは当然です。しかし、そこで感情的になったり、諦めてしまったりしては解決から遠のいてしまいます。
この記事で紹介した5つのステップを、冷静に一つずつ踏んでいきましょう。
- まずは状況確認: 購入履歴から配送ステータスをチェックする。
- 業者への連絡: 回答期限を設けて「催告」を行う。
- 詐欺の可能性を判断: 連絡が取れない場合、怪しいサイトの特徴と照合する。
- 返金手続きの実行: 支払い方法(カード/振込)に応じた具体的な行動を取る。
- 専門機関への相談: 解決が難しい場合は、公的窓口を頼る。
💡 最も大切なのは、「泣き寝入りせず、まずは行動してみること」です。
あなたの勇気ある一歩が、問題解決に繋がります。